1973年のミュンヘン外交会議での合意に従った欧州特許条約 (EPC) は、欧州特許機構およびその機関、すなわち管理理事会および欧州特許庁設立の法的根拠である。欧州特許機構は欧州特許付与業務の経営的かつ経済的自治権が与えられており、独立機関として、欧州連合(協定時はEEC)の外部でこの業務を行う。管理理事会は欧州特許庁の監督機関であり、欧州特許庁による欧州特許付与業務を承認している。欧州特許庁の中枢はミュンヘンに、そして支部はハーグにある。1973年の欧州特許条約は、将来のニーズに応じた支所の設立も考慮されている。(なお、支所の設立は管理理事会の承認が必要である。)

欧州特許条約は、発明の保護に関して欧州の締約国間の協調を強化し、欧州における特許付与の単一の手続きを提供するために、締約国に共通の特許付与の法制度を確立するための政府間協定である。欧州特許は、加盟国内では、その加盟国が付与した国内特許と同じ効果を有する。
欧州特許条約は、1883年締結のパリ条約19条の趣旨の範囲内における特別協定を構成する。そして、欧州特許条約は、1970年締結の特許協力条約45条の趣旨の範囲内における広域特許条約である。

合計178 の条文と106 の規則を含む1973年の欧州特許条約は、欧州特許の付与に必要な実体法および手続法の全ての要件を含む。欧州特許の有効期間は一様に20年間と決められている。新たに規定された手続きでは、特許付与は3名の審査官のグループにより最終的に決定される。これは、1名のみの審査官により決定される以前のやり方に相反している。この決定はまた、欧州特許庁がその結果として全体の特許付与プロセスに従うことを目的とする品質基準の証拠として理解される。異議申立ておよび審判の手続きもまた標準化される。手続き言語は英語、フランス語、ドイツ語に定められ、一方で、想定された期限内に3公用語のうちの1言語への翻訳が提出される条件で、自国語による出願も可能である。限定された10年の移行期間に、締約国は、特に、条約に規定された特許権存続期間(出願から20年)に関して保留を宣言することができた。当時は、数か国において登録権存続期間がこの20年の期間から逸脱しており、この適用除外期間に、締約国はそれに応じて少しずつ国内法を調整するべきであった。

特許権登録後の特許明細書は出願と同じ言語で公開され、登録されたクレームは他の2公用語でも公開される。加盟国は、自国での権利の有効性確認のために、自国語の明細書の翻訳を要求することができる。

さらに、欧州特許条約は、1970年締結の特許協力条約の出願に関する広域の規定も包含する。この特許協力条約のもとで、欧州特許庁は、PCTに従って提出された国際出願の受理官庁および指定官庁となりうる。また、国際調査機関および国際予備審査機関としての役割も果たす。

1つの出願とそれに伴う標準化された手続きにより、欧州特許制度は、出願人が指定した締約国内で有効な欧州特許の束を確保する機会を提供する。産業財産権に関する既存の国内法とともに、国内レベルの出願により国内のアプローチを可能にし、しかしまた、欧州特許庁に出願することにより、国家主権を除外することなく超国家的レベルも支援する。このアプローチにより、出願人は、特許付与後に指定した全ての国において国内段階に移行する方法か、欧州ルートに従わずに複数の国内特許庁に出願する方法か選択する機会を維持する。いずれにせよ、特許権の利用は各国機関に残ったままとなった。両方のルートの共存もまた欧州特許制度の成功の要因だったかもしれない。

戦略的あるいは政治的観点から、欧州特許制度のコンセプトは、20世紀後半において高まる国際経済競争の課題に対する欧州の反応と見なすことができる。(欧州共同体での統一特許に関しては、尚更、そのように見なすことができる。)

目次

前章 13章:欧州特許庁の開設準備に関する暫定委員会 – トピックと業績