…政府間の国際的に活動する組織としての役割は、少なくとも間接的に欧州特許機構に割り当てられる。



1973年のミュンヘン外交会議では、欧州特許条約や欧州特許庁の開設準備に関する決定等の国際協定が調印された(詳細は10章11章などを参照。)。この国際協定は、欧州特許機構(European Patent Organization)の正式な設立に向けた次の段階の準備作業や前提条件のための 基本原則を定めた。特許付与機関としての欧州特許庁(European Patent Office)の運用をできるだけ早く開始させるために一連の活動が詳細に定義された。

前述の国際協定の議論では、欧州特許庁の開設準備に関する暫定委員会の設立が決定された。この暫定委員会は、1974年1月中旬に最初の会議を開催し、Kurt Haertel 氏が暫定委員会の議長に任命された。前述のミュンヘン外交会議では、妥当な時期に機構創設のための必要な準備と着手が暫定委員会に委任された。この暫定委員会は、欧州特許庁の立地に関する実務上の条件、人的配置、職員の養成、技術的環境、政治的側面、労働環境などの詳細について、将来の欧州特許庁における 全てのトピックに関係した。この暫定委員会自体の責任は、ミュンヘン外交会議中に合意した様々なトピックに関する詳細な提案を準備することであり、これらのトピックに関する決定権を与えられたわけではなかった。これらのトピックに関する提案は、欧州特許機構の管理理事会が最終的に決定するための基本的な提言だった。

1973年のミュンヘン外交会議では、暫定委員会は多数のトピック関連の作業部会から構成されるべきだと決定された。各作業部会は、調印加盟国の代表から構成され、作業効率とリソースを踏まえれば、各作業部会において、最大6つの加盟国からの代表が代理を務めるべきとされた。将来の開催国(ドイツとオランダ)の代表は、さらに全作業部会の会議に参加することができた。

暫定委員会の最初の会議が、ドイツからの招待によりミュンヘンで開催された。1974年1月のこの会議では、7つの作業部会が設置され、組織、先行技術調査、審査(異議申立ておよび審判のトピックを含む)、職員、 財務、法的事項、そして建物、欧州の学校、住宅を含んだトピックを扱った。

最大限の法的確実性を持つ高品質の産業財産権を提供するために、欧州特許庁に必要なリソースを与えることを踏まえれば、欧州特許庁における将来の手続きプロセスのために、詳細な計画を立てなければならなかった。手続き的観点から、また主に先行技術調査および審査に関して当初から高品質とすることは、欧州特許制度の成功のための重要な要素であった。欧州特許庁は、IIB(国際特許協会)のハーグ支局における既存の組織的・技術的インフラを将来の活動の一部に利用することができたものの、その他の事項については、全ての組織、プロセス、タスク、ツールに関してこの段階で最初から定義されなければならなかった。

暫定委員会は、契約を締結する権限を与えられていなかったものの、暫定委員会の会議の開催国(当初はドイツとオランダ)に関する組織の将来の所在地や法的枠組みに関連した将来の政治的な決断や取り決めのための草案準備においてセンシティブな役割を担っていた。

1973年のミュンヘン外交会議の期間中に、暫定委員会の業務と作業部会への割り当てについての草案リストが追加された。このリストは、基本的な作業計画のみならず、その後の数年間に実施されなければならない作業の戦略的、財務的、そして政治的側面に対する視点も含んだ一連の業務からなり、暫定委員会が今後何年かに終了しなければならない大規模なプログラムの基礎として定義された。

 

目次

次章 13章:欧州特許庁の開設準備に関する暫定委員会-トピックと業績

前章 11章:欧州特許条約ー宣言書及び決定書