1965年に提供可能なサービス要件が定義されたことで、諮問グループが規定した目的のために、文書サービス提供者が十分に機能するには、どのような前提条件が必要であるかがより明確になった。まず、公開された特許公報や公開情報が、特許庁から文書サービス提供者にタイムリーに、かつ確実に配信される必要があった。議論中には触れられなかったが、この背後には法律の調和、公開と付与手続の調和、分類に関する調和がそれぞれ継続することが必要であった。しかし前述したように、大抵のトピックは、他の作業部会により様々なレベルで扱われていた。公報のタイムリーな配信が確保できれば、このサービスは各国特許庁を始めとするあらゆる顧客層に対して、より正確で包括的で使いやすい情報を提供することが可能となり、特許出願から審査・付与までの一連の手続を通して、時間・労力・費用の節約に貢献できると考えられた。そのためこのサービスは、今後10年間に公開予定の大量の特許文献に対応するために、絶対に必要なツールパッケージとして理解されていた。
1965年11月の会議の後、BIRPIは、World Patent Index(世界の特許インデックス)を実現するための有用性、顧客の受容性、経済環境に関する調査・研究を継続した。1965年末から1966年初頭にかけて、BIRPIはIIBと協力し、このアイデアと提供可能なサービスを詳述した宣伝用のパンフレットを発行した。
1966年、BIRPIはIIBと協力して、World Patent Index サービス計画に対する可能性とその有用性についての調査を行った。具体的には、20か国以上の潜在的なユーザーや関係者と連絡を取り、このようなプロジェクトの需要と財政的な補償の範囲を把握した。また、約1100件の回答を得た結果、ユーザーがサービスに何を求めているのかを把握し、より詳細なシナリオを描くことができた。また、経済的な視点からもプロジェクトの実行可能性を、ある程度正確に評価することができた。調査の結果、提供サービスの価格設定に関する以前の見積もりに基づき、サービスに関心のある業界、特許弁護士や代理人による購読によって、100万米ドル以上の年収を生み出す可能性があることが示された。 この情報は確定的ではないものの、提供サービスは長期的には自己資金で運用でき、各国特許庁からの財政支援を必要としないという可能性を、多少なりとも示してくれた。とはいえ、この時点では初期投資に必要な資本金をどのように調達するのかという問題が残っていた。この問題については、BIRPIがフォローアップする必要があった。BIRPIは初期投資に必要な資本金を賄うために、このプロジェクトに最も関心のある各国特許庁に、自身が直接寄付をするか、あるいはサービスに関心のある各国の民間団体で資金調達キャンペーンを実施する用意があるか、確認する必要があった。BIRPIは資金が確保される場合に限り、World Patent Index サービスの確立計画を進めることにした。
1967年は、World Patent Index サービス確立の実現可能性に関する調査が継続され、主に実用化の可能性についての様々な側面を深めるとともに、財政的な面についてもより詳細に調査が行われた。BIRPIは、プロジェクトの進行に時間がかかることを避けるため、システムにかかるコストの詳細な分析と、サービスによる収入の見積もりを記載した文書を作成した。財務分析では、これまで提起されてきた初期段階および長期的な資金調達の問題について、肯定的な見通しが示された。12月の工業所有権連合代表者会議では、調査結果に基づきWorld Patent Index サービス確立の計画を進めることを決定した。さらに、1968年春には、複数の特許庁とIIBが協力することにより、World Patent Index サービス確立の可能性を探ることになった。仮に、このアプローチが実現可能な期間内に実現可能なプロジェクトにつながらない場合、BIRPIは他の可能性を模索しなければならなかった。そこで、BIRPIと民間企業のジョイントベンチャーが、World Patent Index サービスを確立する可能性が出てきた。
1968年11月、BIRPIとIIBは、主に相互協力と情報交換を深めることを目的とした契約を締結した。両当事者間では、相手方のハイレベル会議に相互に参加し、定期的な会合も行われた。また、連絡担当者を交換する機会が合意され、互いに関心のある出版物や社内使用文書を含む文書類も交換された。さらに契約書の別の項においては、必要かつ適切な場合には、例えばPCTのような特別なトピックの協力に関する事項と同様に、World Patent Indexについても、特にいずれかのプロジェクトから費用が生じた場合の分担について、詳細規定された協定を締結することに合意した。このことは、IIBがWorld Patent Indexプロジェクトに関心を持っていることを改めて示すものであり、両当事者間の協力というアプローチもあると考えられた。
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