この情報をタイムリー、かつ有益な方法で提供するために、各国特許庁は提出された特許や実用新案の発明の出願に関する基本的な情報を、遅滞なく定期的に配信する必要があった。また、これらのサービスを包括的に提供するために、国名、文献番号、文献の日付、出願日および出願番号、国際分類または国内分類に応じた分類、特許権利者名、発明者名、優先権主張発明の日付・国名・番号などの必要不可欠、かつ基本的な書誌データが定義された。対象となるリーガルステータス情報サービスに関しては、基本要件の範囲はかなり限定されていた。すなわち、この情報が各国特許庁の公報で入手可能である限り、特許出願の存続に関する基本情報(例えば、出願の公開、取り下げ、拒絶、特許付与等は包含すべき主要な情報だった)を提供することができた。

システムに収集されたデータフィールドを類推すると、システムは検索基準として書誌データフィールドのそれぞれに基づくリストを提供することが求められた。“パテントファミリー”という表現はこの時点ではまだ使用されていなかったが、実際にはまず、異国間において同一発明に関する特許の統合データリストを提供するシステムが必要とされ、さらに、そのようなリストの変更や任意の公開出願の変更を識別し、名前や分類に基づくリストを提供することも必要とされた。

上記のサービスは、“個別レポート”、“カレントアウェアネスサービス”、“週次レポート”の3つの種類で提供された。

個別レポートにおいては、各顧客の要求に対する応答時間を、通常2営業日以内と定義されていた。この時点では、主な対象グループは、企業の特許部門、特許弁護士、代理人(外国での新規発明出願の可能性についての判断をサポートするため)、科学研究者やドキュメンタリスト(任意の技術の最新状況をいつでも確認できるようにするため)に特定されていた。

通常、カレントアウェアネスサービスは、必要な情報を保有する各国特許庁から公報を受け取ってから、2日以内に顧客に通知する必要があった。この時、文書サービス提供者は、発行後5日以内に各国特許庁から公報を受け取ることを期待していたため、発行から1週間以内に顧客に情報を提供することが可能となる。これらのレポートの主な対象グループは、企業の特許部門、特許弁護士、代理人(自社および競合他社の特許出願状況についての最新情報を常に入手できるようにするため)、科学研究者や文書化部門、各国特許庁の審査官(特定の技術分野の新規出願や付与に関する最新情報にアクセスできるようにするため)に特定されていた。

興味深いのは、当時、文書サービス提供者から顧客への検索結果の伝達手段は、手紙、ケーブル転送、テレックスによって行われていたことである。時代は変わり、今ではそのような通信媒体は非常に珍しいものになった。顧客が要望する情報の範囲にもよるが、上記サービスの価格は、個別レポート1件につき10~40米ドル、1つの調査依頼を年間で継続する場合、20~40米ドルの間で見積もられていた。

週次レポートは、サービスの範囲内では最も大きな割合を占めるレポートになると見込まれた。その他のレポートについては、規定されている検索基準に沿って、200ページ以上の印刷形式で構成されていた。毎週発行される文献については、紙ベースでは量が多すぎるため、印刷形式に代わる媒体が検討された。一方で、1960年には容易に入手できる便利な媒体の1つとしてマイクロフィルムが認識されていた。週次レポートは、主に世界規模の新規性調査を行う各国特許庁にとって特に有用であると期待されていた。というのも、週次レポートには、同一発明に関連する全ての公開出願と特許のリストが含まれているため、審査官は、同一発明に関連する出願であれば、1つの出願をチェックするだけで作業時間を大幅に節約することができ、文献に分類を付与する過程においても、複数の国の公報で同一発明を分類する時間を節約することができたからである。

このサービスは、年間インデックスを含む52週分のレポートを提供するもので、その年間価格は、購読者数に応じて400~800米ドルであった。

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