34章: INPADOC – オーストリア政府からの提案
1971年の夏の終わりまでに3つのオファーがすべて届き、WIPOの国際事務局は入札者(Derwent、IIB およびオーストリア政府)の実際の活動だけでなく、彼らが要求したサービスを、どのように実現しようと計画しているかを正確に把握するために、同じ質問のアンケートを1971年10月初旬に行い、当月末までに三者すべてから回答を得た。国際事務局による評価を含むアンケートの回答は、常設小委員会のメンバーとDerwent にも伝えられた。
執行委員会はアンケートの中で、当事者に向けて重要な要素を定義していた。そして、最終的にどの入札者にサービスの提供を任せるべきか、評価の基礎となる以下の結果が得られた。
アンケートの結果、 三者すべてがパテントファミリーサービスと分類による識別サービスを行う準備をしていることがわかった。IIBは分類サービスをIPCレベルで提供することしかできなかったが、Derwentとオーストリア政府は、既存の分類に基づいた識別を提供することができた。三者が提供したデータの適用範囲に関しては、オーストリア政府はパテントファミリーと分類サービスに属するすべての国の文書を含んでおり適用範囲が最も広く、DerwentとIIBは限定されていた。三者はすべて、特許文献の複製を紙または16 mmロールフィルムの形で提供できることがわかった。また、各国特許庁からの寄付は不要であり、どの国の特許庁もリスクや現金の支出がないことも明らかになった。また、これら入札者たちのこれまでの実績を考えると、DerwentとIIBは、特許の複製サービスだけでなく、一定数の国の既存のデータコレクションを参照することができた。一方で、オーストリア政府は特許データベースに関する経験はなかったため、複製サービスのみの利用であったものの、あらゆるPCT調査機関、または将来オーストリアの機関にデータを提供することになる各国特許庁に対して、収集したファミリーデータ及び分類データをすべて無償で提供する用意があった。オーストリア政府の提案と比較すると、IIBはこの点でより限定的であり、また、Derwentは特許庁に対して比較的割引率の低い商業的アプローチをとっていた。
アンケートでは直接言及されていないが、サービス提供のための未来像に関するもう一つの要件が定義されていた。それは、「制度の責任は、すべての政府と産業界が対等な立場で関係を維持できる組織にあるべきだ」というものであった。
IIBは、WIPOには何の役割も想定していなかった。また、DerwentはWIPOを単なる協力パートナーとして見ていた。一方、オーストリア政府は、オーストリア政府の全責任の下で、かつ、WIPOと公式関係の下で、(まだ存在せず、新しく設立される)機関を通じてサービスを行うことを提案した。オーストリア政府の提案では、WIPOは、機関の運営において一定の役割を与えられ、機関の利益のためだけに行われたすべてのWIPOの支出費用のみ、全額払い戻しが認められた。
オーストリア政府の提案は、提供されるサービスの範囲だけでなく、提供条件や、サービス提供者が民間か非民間かという懸念事項を含め、最も有利なものとして評価された。1971年12月の第1回会合において、アンケートの回答に基づいて、常設小委員会は事務局長に対し、以下の指針に沿って三者すべてと交渉を継続することを提案した。
現在 “特許文献サービス”と呼ばれているものは、オーストリア政府によりウィーンに新設され、オーストリア当局の全責任の下の機関により運営されるべきである。WIPO の役割は、オーストリア政府のアンケートの回答で提案されたものであるべきである。
本サービスは、特に機械可読データの作成とソフトウェアの共通開発に関しては、当該機関とIIBの協力により最大限に運営されるべきである。両機関は自ら開発した製品の価値を自由に決めることができ、特にマーケティングの分野においては当該機関と、他方ではDerwentとの間で可能な限り取り決めを検討すべきである。
そして、将来の契約当事者(オーストリア政府とWIPO)が本サービス契約の詳細について検討している間に、 WIPO国際事務局は、世界中の主要な特許文献の作成者と連絡を取り、本サービス業務の円滑化のためにどのように協力する用意があるかを調査した。
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