49章: 情報普及に関するEUROPATIC解決策
EPOと各国特許庁との間の協力協定の中で、EPOは各国特許庁に、あるいは各国特許庁が指定したホストに、ファミリー(FAMI)、インベントリ(INVE)、分類システム(ECLA)の3つのデータベースの全部または一部の使用と、販売の非独占的権利を提供した。これらの目的は、一般に情報を提供することであり、オリジナルでもデータを修正しても使用することができた。この権利には、データベースをコンピューターのローカルに保存する権利や、第三者がデータベースに直接アクセスすることを許可する権利、データベースに含まれるデータのプリントアウトを送信することを可能にする権利が含まれた。EPOが提供するデータベースの保存と処理は、加盟国の領域内にあるコンピューターでのみ可能であり、この時点ではヨーロッパの10カ国がEPC(欧州特許条約)の締約国だった。EPOとホスト事業者は、第三者が合理的な範囲内でのみデータベースを利用できるように、適切な手段を講じなければならなかった。そのため、ECLAデータベースのデータを印刷することは完全に禁止されており、INVEデータベースからのデータの印刷は、1回の依頼につき1000データセットに制限されていた。各国特許庁またはホスト事業者は、INPADOCを通じてEPOから提供されたデータセットの全部または一部を、独自に入手したデータセットと組み合わせることができた。各国特許庁ではなく,指定されたホストがEPOデータを一般に提供し,このホスト事業者がEPOのデータを普及させる権利を有し,さらにINPADOCとの間でINPADOCパテントファミリーデータベースを一般に提供する契約を結んでいる場合には,ホスト事業者はEPOデータベースとINPADOCデータベースを組み合わせることはできなかった。希望する場合には、ホストとINPADOCの間で特別な契約を締結する必要があった。
この状況におけるINPADOCの役割は、データの配布を組織・管理し、EUROPATIC協定の中でEPOデータの受信者に一種のヘルプ・サポートサービスを提供することの他に、各国特許庁が契約を遵守しているかどうかを監視し、万が一、契約当事者が契約に違反した場合にはEPOに通知することだった。
INPADOCの重要な任務、すなわちデータの収集とパテントファミリーサービスの提供という観点から、この協定には商業的な側面以外に、さらに重要なトピックが含まれていた。INPADOCは、EPOが発行した文書をINPADOCデータベースに含めることを許可されるようになり、またINPADOCは、これらのデータをINPADOCデータベースの一部として、外部ホスト経由で一般に提供することも認められた。一方で、INPADOCの立場が望ましくない形で強化されることへの懸念を表明した締約国もあり、このテーマはINPADOCとEPOの間で広く議論された。しかし、INPADOCが義務づけられているパテントファミリーサービスの世界的な収集に関しては、データの利用可能性、データの完全性、データの質の観点から非常に重要であった。そして、INPADOCがこれらのデータを提供することを可能にすることで、網羅性の観点だけでなく、最新の情報を提供するという観点からも、この試みは特許情報データへのユーザーの高まる関心と期待を満たすための重要な一歩となった。また、INPADOCにとっては、EUROPATIC協定の役割の中で行ってきた物流、管理、そして特に技術的な作業が財政的に補償されたことで、商業的な観点からも非常に重要な進展となった。
INPADOCとの協力協定は1984年3月に締結され、1984年4月1日に発効した。当初の契約期間は3年であったが、その後、契約を延長するためには、1年ごとに正式な更新手続きが必要だった。そのため1987年4月以降、INPADOCが1991年にEPOに統合されるまで、契約は毎年更新されていた。
これらの契約により、欧州特許機構の締約国における技術情報の普及に関する技術的・法的な枠組みが管理理事会によって決定された。ここで重要なのは、各国特許庁が技術情報の普及のためにデータベースを提供し、これらのデータの公共利用は極めて保守的な、あるいは制限的な方法で明確に定義されていたことに加えて、EPOは1984年にオーストリア、フランス、オランダ、スウェーデン、スイスの特許庁および英国の大英図書館と契約を締結し、ハーグにある3つのデータベースのEPO内部データ処理システムに直接アクセスできるようにしたことである。この契約では、これらの特許庁はEPOのコンピューターから得られた情報を、各特許庁の公共参考図書館の利用者や内部使用に限り使用することが認められていた。EPO内部の3つのデータベースに直接アクセスして得た情報を提供する権限は、情報へのアクセスを広く一般に提供したいというEPOの意図に沿ったものと理解できるが、EUROPATIC協定から派生した結果でもあった。
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